当工房での大島紬製造工程のうんちく話を書いてみました。

◆図案

大島紬の胆となる部分である絣(カスリ)模様を構成する絣糸の設計図です。

これをもとに「締め」、「絣整経」及び「染色」が行われます。

当工房では独自開発のPCによる図案作成を行っており、これまでの紙による図案作成に比べて変更、修正、保存がだいぶ楽になりました。

 

◆染め

稀に特殊な商品を作るために生地を染めることもありますが、先染めの糸染色がメインです。

浸染をはじめ大島紬独特の刷込み染色や抜染も行っています。

自然な感覚を大事にした琉球藍の紅藍染や屋久杉染め等の草木染をはじめ、鮮やかで色数が多く高い染色堅牢度を持つ化学染料による染色も行っています

 
「紅藍染」について

「Silk-Oj」について

 

◆製織準備

製織準備とは糸を機にかけて織ることが出来る状態にする作業のことで、絣糸を使用する大島紬は製織準備だけでも通常より作業が多く、良い反物を織りあげるためには手を抜くことが出来ない工程です。

 

糸を機にかけるために木枠や、シャトルの管や、経糸ビームに糸を巻いたり、かと思えばせっかく織った生地を破って糸に戻したり・・・と実に地味な作業でありながら、糸の順番を間違えないように、糸が切れないように、汚れないように、張り具合を揃えて・・・等とても神経を使う作業でもあります。

 中でも、糊張りされた絣糸の束を綛に取り直す「あげわく」と呼ばれる日本昔話に出てくるような糸巻き作業は、まさに伝統技術であることを感じさせられます。

 

◆織り

当工房では高機の手機、及び動力式の半自動織機があり、製品及び柄によって使い分けて製織を行っています。

 

高機の手機は「カラカラ・バッタン」のまさに日本昔話さながらの手作業です。

無人で1分間に数十cm織るような最新式の織機と比べたら、何の利点もないように思いますが、最新式の織機がどう頑張ってもできないことをすることができます。

それは、まさに大島紬の最大の特徴である織目単位の緻密な絣合わせをする技術です。

 

最近では柄物はプリント(捺染)等の後染めやドビーやジャカード等その他の技術のほうが発達し、先染め平織りで柄を作る絣技術はほとんどこれらに取って替わられてしまいましたが、かつて大島紬はとても人気があったので、自動化して大儲けしようと県内外で研究されてきましたが、未だに実用の域に達していません。

絣合せだけが製織の技術ではありませんが、織目単位の絣合せは、これだけ技術が発達した現代においても人手に頼るしかないというのが本当のところです。

 

ですので、計画的な量産を要する現代の産業について行く事ができず、未だに産業革命が始まってすらいない状況ではありますが、ベテランの織工さんが大島紬を織っているところを見たときは、最新式の織機で熟練したオペレーターが織っていると思って頂いても決して間違いではありません。

 

そして大島紬を手に取ったときには絣模様をよく見てください。

場所によって微妙に絣模様がずれていることもあるかと思います。

例えは悪いですが、お昼前で織工さんがお腹が空いて落ち着かなくなったのかもしれません。

熟練を要する非常に緻密な手作業ですので織工さんの精神状態にとても左右されます。

良し悪しは別として糸一筋一筋に込められた作り手の魂を感じ取ることができるかもしれません。